変形性頸椎症

病院、病態

頸椎の椎間板が疲労の為や老化の為に変形して磨り減ってしまうと、骨同士が直接ぶつかり合うようになります。この結果、骨に棘<骨棘:こつきょくといいます>が出てきます。また、脊椎同士をつなげるテープのような役目をする<靭帯>も厚くなってきます。すると、脊椎管すなわち脊髄や神経の入れ物のスペースが狭くなってくるため、脊髄や神経が圧迫されることになります。椎間板や骨棘のために起きる首の痛みや凝り(肩こり)だけでなく、神経までが侵されることになります、この状態を総称して<変形性頸椎症>あるいは<頸部脊椎症>と呼んでいます。

変形性頸椎症の図         MRI
変形性頚椎症

<脊椎脊髄とは>に示した、正常な頸椎 MRI 像と比べてみてください。
 椎間板が磨り減って、後ろの方向へ出っ張り、骨棘の出てきて、後ろにある脊髄を圧迫しています。 脳と脊髄のまわりには髄液という水が循環しています(ここでは白くみ
えます)。首の真ん中あたりで、脊髄が前後から圧迫をうけて、水のスペースがなくなっています。グレーにみえる脊髄の中が白くみえます。これは、脊髄に傷がついている状態を示しています。

症状

症状は大きく分けて3つになります。

  • 1:頸椎のがたがたからくる首の痛み、肩の凝りなどです。これを<軸症>と呼んでいます。
  • 2:頸椎の間から出る神経が、骨棘やでっぱった椎間板で圧迫されて、手や腕のしびれや腕が挙らないなどの症状を出すことがあります。これを<神経根症>と呼んでいます。
  • 3:頸椎のなかにある脊髄がでっぱった椎間板や骨棘、分厚くなった靭帯などで圧迫をうけて、手足への命令がうまく伝わらなかったり、手足からの情報が脳へつたわらなくなり、手足が動かなくなったり、しびれたり状態で、これを<脊髄症>と呼んでいます。

診断・検査

 レントゲン写真や CTで、骨の変形の度合いを調べます。また、首を動かした状態でも、レントゲン写真をとって、骨のズレの状態を調べます。MRIで、神経や脊髄が圧迫されている状態を調べます。また、脊髄の障害されている度合いを検討します。

治療・手術

 基本的に、誰でも首の動かしすぎや、老化によってある程度発生する症状です。つまり、悪性の病気ではありません。必要以上に病気であると考えない方がよいと思います。

 先ずは、ご自分で痛みの起きる首の位置などを避けることが大切です。就寝の際の枕の高さ、位置を工夫するのも一つの方法です。

 首の周りの筋肉の緊張をとるために、暖めたり、超音波やレーザーを当てたりすることも行われています。<牽引療法>もよく行われています。鍼灸、マッサージなど種々の治療方法があります。しかし、症状が改善しない治療方法を続けることはお勧めしません。いずれの治療方法の継続の目安は3週間~3ヶ月です。いずれにしても、しっかりと診断して見通しをたてておくことが重要です。

 <軸症><神経根症>は、上記のような治療方法<保存的治療方法>で、症状がかなり改善することが期待されます。しかし、手足のしびれや動きに問題があるようですと<脊髄症状>の可能性が高いです。脊髄症状の場合、今後数年のうちに脊髄の圧迫によって手足が動かなくなって、歩けなくなる確率が高いので、更なる手段(すなわち手術)を視野に入れておく必要があると思います。

 これらの見通しは患者様個人によって異なります。日常の生活習慣、仕事、突発的な事故などによって各個人で異なります。私どもは、患者様の治療にあたっては、患者様各人の状況も考えながら、じっくりと今後の治療方針につて相談しながら進めていきたいと思っております。